俳句や短歌の英訳はいろいろある

[英語の現場からレポート]
2015年5月号の記事より引用

Hiragana Timesの5月号では、偉大な俳人、歌人を紹介しています。その一人、芭蕉は有名な「古池や蛙飛び込む水の音」の作者として紹介しています。この作品の「古池や」をold pondと、「水の音」を「sound of water」と素直に訳すことができます。実際にそのような英訳が少なからず紹介されています。

そもそも、単に蛙が池に飛び込んだというこの句がなぜ傑作中の傑作と評価されているのか。「古池や」は静寂を意味し、蛙が飛び込んだ音は、その静けさを破った音。つまり、沈黙を破り別世界に移る一瞬をとらえた作品と解釈されています。おおげさに言えば、宇宙のビッグバンの瞬間を表現したようなものかもしれません。

そのため、ここでは「古池や」は静けさがより感じられるように「ancient pond」とし(quiet pondより静寂が感じられる)、「水の音」は静けさを破るという説明にして「breaking the silence」としました。全文では、「The ancient pond, a frog jumped in, breaking the silence」です。もちろん訳者により、ニュアンスは変わります。

蕪村も、「菜の花や月は東に日は西に」の名句とともに紹介しています。しかし、菜の花は英語で「rape-flower」と言います。Rapeは女性を襲うレイプを連想させ、日本語での雄大な光景が浮かび上がる情景には、違和感があります。ちなみに、「Rape-flower fields, rising moon in the east, sinking Sun in the west」と訳しています。

同じく紹介した与謝野晶子の「柔肌の熱き血潮に触れもみで、寂しからずや道を説く君」も厄介です。「道を説く」は「人生はこうあるべき」という意味ですので、道をroadと訳すと、とんでもない歌になってしまします。


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